物流担当者必見|サイバー攻撃から学ぶ物流BCP
おつかれさまです。
「物流社員はつらいよ」を運営している、ものながれロジ男です。
そして、今回のテーマは「サイバー攻撃が物流へ与える影響」を深掘りします。
物流業界と聞くと、多くの人が思い浮かべるのはトラックや倉庫、フォークリフト、コンテナといった「モノ」の世界ではないでしょうか。
しかし、現場で働いていると実感するのは、物流を本当に動かしているのは「情報」だということです。
荷物は情報に従って動きます。
出荷指示が出るからピッキングが始まり、配車データがあるからトラックが走り、通関情報があるからコンテナが港を出る。
つまり、物流とは「情報」と「モノ」が一体となって初めて成立する仕事です。
だからこそ、近年特に気になっているのがサイバーセキュリティです。
2024年問題やドライバー不足、物流DX、自動運転トラックなど、物流業界には多くの話題があります。
その一方で、忘れてはいけないのが「システムが止まるリスク」です。
2026年7月には、冷凍・冷蔵物流大手のニチレイでサイバー攻撃によるシステム障害が発生し、一部で受発注や出荷に影響が生じました。その後、全拠点で通常稼働へ復旧し、受発注制限も解除されたことが発表されています。
結果だけを見ると「復旧して良かった」というニュースです。
しかし、物流に携わる立場から見ると、この出来事はそれ以上の意味を持っています。
今回は、このニュースをきっかけに、メーカー・海貨・物流担当者が今考えるべき**物流BCP(事業継続計画)**について掘り下げていきます。
サイバー攻撃は「IT部門だけの問題」ではない
「サイバー攻撃」と聞くと、
「情報システム部門が対応する話」
そう考える人も少なくありません。
もちろん、システムを守るのは専門部署の重要な役割です。
しかし、物流の現場で働く私たちにとっても、決して他人事ではありません。
なぜなら、物流現場そのものがデジタル化されているからです。
例えば、一日の仕事を思い返してみてください。
朝一番で出荷予定を確認する。
在庫を確認する。
配車を組む。
通関書類を送る。
倉庫へ出荷指示を出す。
配送状況を確認する。
これらの多くは、システムを利用して行われています。
もし朝出社したとき、
「システムにログインできません」
という状態だったらどうなるでしょうか。
その瞬間から、物流は止まり始めます。
つまりサイバー攻撃は、IT部門だけの問題ではなく、現場全体の問題なのです。
物流を動かしているのは「情報」である
物流には「モノを運ぶ仕事」というイメージがあります。
もちろん、それは間違いではありません。
しかし実際には、荷物は勝手には動きません。
荷物を動かすためには、
- 出荷指示
- 入庫予定
- 配車情報
- 在庫情報
- 配送ルート
- 通関データ
- 港湾予約
といった情報が必要になります。
例えば、コンテナが港へ到着しても、搬出指示がシステムで確認できなければ動かすことはできません。
倉庫に商品が山積みになっていても、出荷データが見られなければ出荷できません。
つまり、
物流は情報が流れて初めて動く仕事
なのです。
昔は紙の伝票が中心でした。
電話で配車を依頼し、FAXで出荷指示を送り、紙の伝票で荷物を管理する。
そんな時代もありました。
しかし現在は違います。
物流DXが進み、あらゆる情報がリアルタイムで共有される時代になりました。
その恩恵は非常に大きく、
- リードタイム短縮
- 在庫削減
- 人手不足対策
- 作業効率向上
など、多くのメリットを生み出しています。
その一方で、
システムが止まれば物流も止まる
という新しいリスクも生まれました。
今回のニュースから分かる「事実」
まずは事実を整理しましょう。
今回のニチレイの発表から確認できることは次のとおりです。
- サイバー攻撃によりシステム障害が発生した
- 一部で受発注・出荷に影響が生じた
- 復旧作業を進め、最終的には通常稼働へ戻った
ここで重要なのは、
設備が故障したわけではない
という点です。
倉庫は存在していました。
トラックもありました。
フォークリフトも動かせる状態でした。
それでも物流は影響を受けました。
これは現在の物流が、
「設備産業」であると同時に「情報産業」でもある
ことを示しています。
【考察】物流のボトルネックは「情報」へ変わった
ここからは私自身の考察です。
物流業界ではこれまで、
「ドライバー不足」
「道路渋滞」
「燃料価格」
「港湾混雑」
など、物理的な課題が数多く議論されてきました。
もちろん、それらは現在も重要です。
しかし近年は、それに加えて、
情報が止まること自体が物流停止につながる
時代になりました。
例えば、
出荷指示が表示されない。
在庫数が分からない。
配車データが見られない。
配送先データが消えた。
こうなると、現場では判断ができません。
安全を優先すれば、出荷を止めざるを得ないケースもあるでしょう。
物流DXは業務を大きく効率化しました。
しかし同時に、
情報インフラそのものが物流インフラ
になったとも言えます。
だから私は今回のニュースを、
「物流会社がサイバー攻撃を受けたニュース」
ではなく、
物流そのものの構造変化を示すニュース
として受け止めています。
メーカー物流担当者が今考えるべきこと
メーカー物流では、
「物流会社へ委託しているから安心」
という考え方だけでは十分ではありません。
物流会社側でシステム障害が起これば、
- 納期遅延
- 生産ラインへの影響
- 在庫不足
- 得意先対応
- 売上への影響
まで波及する可能性があります。
そのため、メーカー物流担当者が今後重要視すべきなのは、
「委託先物流会社のBCP」
です。
価格や輸送品質だけでなく、
- システム障害時の代替フロー
- 緊急連絡体制
- 復旧手順
- 情報共有体制
まで確認しておくことが、これからの物流管理には欠かせないでしょう。
物流会社を選ぶ基準は、
「安く運べる会社」
から、
「止まらずに運び続けられる会社」
へ変わり始めているのかもしれません。
海貨・通関業務への影響
メーカー物流だけでなく、海貨・通関業務もサイバー攻撃の影響を大きく受ける業種の一つです。
私自身、海貨業務に携わっていますが、現在の輸出入業務は数多くのシステムによって成り立っています。
例えば、
- NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)
- 倉庫管理システム(WMS)
- 配車システム
- 港湾予約システム
- コンテナトラッキングシステム
- 船会社・フォワーダーのWebシステム
- 通関書類管理システム
これらは、それぞれ独立しているようでいて、実際には密接につながっています。
例えば輸入コンテナを搬出する場合でも、
通関許可が下りる。
倉庫へ搬出指示が送られる。
トラックを手配する。
ドライバーへ配送指示が届く。
港でコンテナを搬出する。
こうした流れのどこか一つでも止まれば、その先の工程すべてが止まってしまいます。
だからこそ、海貨業務では「一つのシステム障害」が想像以上に大きな影響を及ぼす可能性があります。
海貨業務は「時間」が商品である
海貨業界では、「時間」が非常に重要です。
例えば、
- CYカット
- CFSカット
- 船積期限
- デマレージ
- ディテンション
など、期限を過ぎれば追加費用や納期遅延につながる業務が数多くあります。
もしシステム障害によってコンテナ搬出が半日遅れたらどうなるでしょうか。
単純に「半日遅れました」で終わる話ではありません。
船積みに間に合わなければ次船になる可能性があります。
その結果、
メーカーの納期が遅れる。
海外工場の生産計画が狂う。
販売計画にも影響する。
物流は一社だけで完結する仕事ではありません。
だからこそ、一つの障害がサプライチェーン全体へ波及する可能性があります。
サイバー攻撃は誰でも被害者になり得る
「うちは大企業じゃないから狙われない。」
そう考えるのは危険です。
近年のサイバー攻撃では、
規模ではなく、
「侵入できる会社」
が狙われるケースもあります。
また、大企業へ侵入するための踏み台として、中小企業が狙われる事例も報告されています。
物流業界は、
メーカー。
物流会社。
倉庫会社。
海貨業者。
運送会社。
港湾事業者。
それぞれがシステムでつながっています。
つまり、一社だけ強固なセキュリティを構築しても十分ではありません。
サプライチェーン全体でリスクを考える必要があります。
現場で今すぐ確認したいBCPチェックリスト
では、物流担当者として何を確認すればよいのでしょうか。
私なら、次の項目を優先的に見直します。
① 緊急連絡網は最新か
システムが停止すると、社内チャットやメールが使えなくなる可能性があります。
そのとき誰へ連絡するのか。
携帯電話番号は最新か。
荷主・協力会社との連絡方法は整理されているか。
意外と見落とされがちなポイントです。
② 紙で運用できる仕組みは残っているか
物流DXが進む一方で、
紙を完全になくした会社も増えています。
しかし、
緊急時だけは
紙の出荷リスト。
紙の配送表。
紙の連絡先一覧。
これらが最後の砦になることがあります。
「デジタル化」と「アナログの備え」は両立させるべきでしょう。
③ 出荷優先順位を決められるか
システム停止時には、
すべての出荷を通常どおり行うことは難しい場合があります。
だからこそ、
- 医療関係
- ライン停止につながる部品
- 生鮮食品
など、
優先順位をあらかじめ決めておくことが重要です。
④ 委託先のBCPを把握しているか
メーカー物流担当者なら、
物流会社任せにするのではなく、
委託先がどのようなBCPを持っているかも確認しておく必要があります。
物流会社を選ぶ基準は、
価格。
品質。
納期。
だけではありません。
「止まらない体制を持っているか」
も重要な評価項目です。
⑤ 復旧後の運用まで考えているか
意外と忘れられがちなのが、
「復旧した後」
です。
システムが復旧すると、
止まっていた出荷が一気に集中します。
そこで、
どの順番で処理するのか。
荷主へどう説明するのか。
現場へどのように指示するのか。
ここまで考えておくことが、本当のBCPだと思います。
AI・物流DX時代だからこそ重要になる
物流業界では、
AI。
自動運転。
自動倉庫。
IoT。
データ連携。
こうした技術が急速に進んでいます。
これらは物流を大きく変えてくれるでしょう。
しかし便利になるほど、
システム停止時の影響も大きくなります。
だから私は、
物流DXとサイバーセキュリティは、
車の両輪
だと考えています。
どちらか一方だけでは成り立ちません。
「止まらない会社」が選ばれる時代へ
これから物流会社に求められるものは何でしょうか。
もちろん、
品質。
価格。
スピード。
これらも重要です。
しかし私は、もう一つ新しい評価軸が加わると思っています。
それが、
「止まらない会社」
です。
災害が起きても。
システム障害が起きても。
サイバー攻撃を受けても。
できる限り物流を止めない。
そんな会社が、これから荷主から選ばれる時代になっていくのではないでしょうか。
まとめ
今回のニチレイの復旧は、一企業だけのニュースではありません。
物流業界全体に対して、
「物流は情報インフラの上に成り立っている」
ことを改めて教えてくれる出来事だったと感じています。
物流はモノを運ぶ仕事です。
しかし、その裏側では、
情報。
システム。
データ。
これらが絶えず流れ続けています。
だからこそ、これからの物流担当者に必要なのは、
「物流を知ること」
だけではありません。
「情報を止めない仕組みを考えること」
も重要な仕事になっていくでしょう。
サイバー攻撃はIT部門だけの問題ではありません。
メーカー物流担当者も。
海貨担当者も。
運送会社も。
倉庫会社も。
サプライチェーン全体で備えるべきリスクです。
今回のニュースをきっかけに、自社のBCPを一度見直してみてはいかがでしょうか。
未来の物流は、
「早く運べる会社」ではなく、「止まらずに運べる会社」が選ばれる。
私はそんな時代が、すぐそこまで来ていると感じています。
参考情報
- ニチレイ公式発表(サイバー攻撃からの復旧状況)
- 関連報道(物流システム障害・受発注制限解除)
- デジタル庁「サイバーセキュリティ」関連資料
- IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威」
- 国土交通省「物流DX・物流効率化に関する資料」
※本記事の「事実」は各種公表資料・報道に基づいています。「考察」は筆者(ものながれロジ男)の現場経験を踏まえた見解です。


