おつかれさまです。

『物流社員はつらいよ』を運営している、ものながれロジ男です。

そして、今回のテーマは「船舶代理店に向いている人」を深掘りします。

「船舶代理店って、そもそも何をする仕事?」

「英語が話せないと無理?」

「港で働いてみたいけれど、自分に向いているのかわからない」

船舶代理店は、物流業界の中でもかなり特殊な仕事です。

貿易や国際物流に関わっている人でも、実際に船舶代理店が何をしているのか、よく知らない人は少なくありません。

しかし、港に船が入ってきて、荷役を行い、再び次の港へ出港していく。

この当たり前の流れを裏側で支えているのが、船舶代理店です。

今回は物流業界で働く立場から、仕事内容だけでなく、どんな人が船舶代理店に向いているのか、逆にどんな人にはきつい仕事なのかまで掘り下げます。

船舶代理店とは?

船舶代理店をかなり簡単に表現すると、

「船会社や船長に代わって、港で必要になるさまざまな手配を行う仕事」

です。

外国船が日本の港に入港するとき、船長が自分ですべての関係先へ連絡して手続きをするわけではありません。

そこで船会社などから依頼を受けた船舶代理店が、現地の窓口となります。

実際の求人でも、船舶代理店の仕事内容として、

  • 船長や船会社への手配状況の連絡
  • 水先案内人(パイロット)の手配
  • タグボートの手配
  • 綱取り作業の手配
  • 荷役関係者との調整
  • 岸壁の手配
  • 税関・検疫・入管などへの申請
  • 乗組員との打ち合わせ
  • 船員交代や船用品の手配

などが挙げられています。

船員を手配しているマンニング会社、本船を運航しているオペレーター会社、本船を所有しているオーナー会社からの依頼もそうです。

それぞれの立ち位置は独立していて、船舶代理店だからといってなんでも引き受けていいわけではありませんが、結局はどう言う形であれやらなければいけないのが船舶代理店です。

とはいえ、船舶代理店自身が船を操縦したり、貨物を荷役したりするわけではありません。

船を予定通り入港させ、必要な作業を行い、予定通り出港させるための「港のコーディネーター」と考えるとわかりやすいでしょう。

船舶代理店の仕事は「調整」が中心

この仕事を理解するうえで、一番重要なキーワードは、

調整

だと思います。

一隻の船が入港するだけでも、多くの関係者が動きます。

船会社、船長、ターミナル、荷役会社、税関、入管、検疫、水先人、タグボート、綱取り業者、港湾管理者など。

そして問題なのは、それぞれが別々の事情を抱えていることです。

「船の到着が遅れます」

「岸壁が空いていません」

「荷役開始時間を変更します」

「船長から追加依頼が来ました」

「次港のスケジュールがあるので早く出港したい」

こうした変更が起きれば、その影響を受ける関係者へ連絡して、もう一度組み直さなければなりません。

船舶代理店の仕事は、単純な事務作業ではありません。

むしろ、

情報を集める → 判断する → 関係者へ伝える → 手配を変更する

という調整業務の連続です。

ここが、この仕事への向き・不向きを大きく分けます。

船舶代理店に向いている人7選

1.段取りを組むのが得意な人

まず向いているのは、段取りを組むことが苦にならない人です。

船が入港する時間から逆算して、

「この手続きをいつまでに終わらせる」

「この業者にはこの時間に来てもらう」

「船が着いたら次はこれ」

と、複数の作業を組み立てていきます。

しかも、船は必ずしも予定通りには来ません。

天候や海象、前港の荷役状況などによってスケジュールが変わることもあります。

そのため、

予定を作る能力だけではなく、予定が崩れたときに組み直す能力

が重要になります。

これは海貨や国際物流の仕事にもかなり近い感覚です。

2.予定変更に耐性がある人

個人的には、これがかなり重要だと思います。

船舶代理店の仕事では、

「予定通りにいかないことを前提に動ける人」

が強いです。

船のETA(到着予定時刻)が変われば、関係者の手配も変わります。

場合によっては、

「昨日決めた予定が今日全部変わった」

ということもあります。

こういうとき、

「予定と違うじゃないか」

と毎回ストレスを感じる人には、かなりしんどい仕事でしょう。

反対に、

「了解。じゃあ次どうする?」

と頭を切り替えられる人は強い。

船舶代理店では、完璧な予定表を作る能力よりも、変化した状況に合わせて予定表を書き換えられる能力のほうが重要なのかもしれません。

3.電話やメールでの調整が苦にならない人

船舶代理店は、多くの人と連絡を取ります。

しかも単なる連絡ではありません。

「何時までにできますか?」

「この時間に変更できますか?」

「船が遅れています」

「至急確認してください」

こうした調整が頻繁に発生します。

そのため、

人と話すことが好きかどうかより、「必要なことを相手に正確に伝えられるか」

のほうが大切です。

営業職のような華やかなコミュニケーション能力は必ずしも必要ありません。

むしろ船舶代理店で求められるのは、

短く、正確に、必要事項を確認できるコミュニケーション能力

でしょう。

4.英語に抵抗がない人

外航船を扱う船舶代理店であれば、英語を使う機会があります。

船長や乗組員との連絡、海外の船会社とのメールなどです。

ただし、

「英語がペラペラじゃないと船舶代理店にはなれない」

と考える必要はありません。

実際に船舶代理店の求人でも「英語を勉強中の方でも大丈夫」として募集されている例があります。

大切なのは、完璧な英語力より、

英語から逃げないこと。

物流英語には、ETA、ETD、Berth、Pilot、Tug、Arrival、Departureなど、ある程度決まった表現があります。

仕事をしながら頻出表現を覚えていくこともできます。

もちろん英語力が高ければ大きな武器になりますが、「TOEICが高くないから無理」と最初から諦める必要はないでしょう。

5.責任感が強い人

船舶代理店は、かなり責任のある仕事です。

なぜなら、自分の手配ミスが、

船のスケジュールそのものに影響する可能性があるからです。

船は一隻動かすだけでも、多くの人と費用が動きます。

そのため、

「誰かが確認してくれるだろう」

ではなく、

「この手配は本当に完了しているか?」

と自分で確認できる人が向いています。

特に重要な業務ほど、

確認したつもり

が一番怖い。

地味ですが、チェックを怠らない人は船舶代理店では非常に強いと思います。

6.マルチタスクが苦にならない人

船舶代理店では、一つの仕事だけに集中できるとは限りません。

A船の入港手配をしている最中に、

B船から連絡が来る。

その対応中に、

C船のスケジュールが変更される。

そこへ関係業者から電話が入る。

そんな状況も考えられます。

そのため、

複数案件の進捗を頭の中で整理する力

が必要になります。

ただし、すべてを記憶する必要はありません。

むしろ重要なのは、チェックリストやシステム、メールなどを使い、

「何が終わっていて、何が残っているのか」

を管理する能力です。

7.「港で物流を動かしている」という感覚が好きな人

最後は少し感覚的な話ですが、かなり大事です。

船舶代理店は、一般的な事務職とは違います。

巨大な本船が港へ入ってくる。

パイロットが乗船する。

タグボートが動く。

岸壁に着岸する。

荷役が始まる。

そして作業が終われば、次の港へ向かって出港していく。

その一連の動きに、自分の仕事が直接関わっています。

「自分がこの船を動かしている」

という実感を持ちやすい仕事です。

国際物流や船、港が好きな人にとっては、かなり面白い仕事だと思います。

逆に船舶代理店に向いていない人は?

ここまで読むと魅力的な仕事に見えるかもしれません。

しかし、当然ながら大変な部分もあります。

特に次のような人は慎重に考えたほうがいいでしょう。

決まった時間だけ働きたい人

船は会社の営業時間に合わせて入港してくれるわけではありません。

早朝や夜間、休日に船が動くケースもあります。

勤務体制は会社や担当船によって大きく異なるため、求人を見る際には必ず確認したいポイントです。

急な予定変更が苦手な人

船舶代理店ではスケジュール変更が発生します。

「一度決めた予定は絶対に変えたくない」というタイプにはストレスが大きいでしょう。

一人で黙々と仕事をしたい人

PC作業も多いですが、本質は調整業務です。

船会社、船長、官公庁、港湾関係者など、多くの人とのやり取りが発生します。

ミスを引きずりすぎる人

もちろんミスを軽く考えていいわけではありません。

しかし、物流現場では問題が発生したら、その場で次の対応を考えなければなりません。

落ち込むより先に、

「じゃあ、どうリカバリーする?」

と考えられる人のほうが向いています。

待つのが嫌いな人

船舶代理店は、手配、待ち、立会い・・の繰り返しです。

特に、待ちの時間が長いです。

岸壁で入港待ち、荷役終了までの立会い業務など、時間コントロールが効かないのが船舶代理店の大変なところの一つ。

自分のペースで仕事をテキパキ進めたい人には向かないと思います。

船舶代理店は「英語ができる人」より「調整できる人」が強い

船舶代理店と聞くと、

「英語が得意な人向けの仕事」

という印象を持つ人もいるでしょう。

もちろん英語力は武器になります。

しかし、実際の仕事を考えると、それ以上に重要なのは、

段取り力、調整力、正確性、対応力

です。

英語が多少苦手でも勉強できます。

専門用語も仕事をしながら覚えられます。

しかし、

「予定変更があると動けなくなる」

「複数の人との調整が極端に苦手」

「確認作業が嫌い」

という場合、仕事そのものとの相性が悪い可能性があります。

だから船舶代理店への転職を考えるなら、英語力だけを見るのではなく、

自分は調整役が得意なのか?

を考えてみるといいでしょう。

海貨・フォワーダー経験者との相性はいい?

海貨やフォワーダー経験者は、比較的相性がいいと思います。

なぜなら、

  • 本船スケジュール
  • B/L
  • 輸出入
  • NACCS
  • ターミナル
  • 税関
  • 船会社
  • 港湾物流

といった言葉や仕組みに馴染みがあるからです。

特にNACCSは、船舶・航空機の入出港や輸出入貨物について、税関などへの行政手続きと関連する民間業務をオンライン処理する国際物流の基幹システムです。

船会社と船舶代理店の受委託関係をNACCS上で設定し、船舶代理店が入出港関連業務や貨物情報登録などを行う仕組みもあります。

そのため海貨や通関、フォワーダーなどでNACCSに触れてきた人であれば、完全未経験者より業務の全体像を理解しやすいでしょう。

ただし、

貨物を見る仕事から、船そのものを見る仕事へ変わる

という違いがあります。

ここは面白いポイントです。

海貨では、

「このコンテナをどう動かすか」

を考えることが多い。

一方、船舶代理店では、

「この船をどう入港させ、どう出港させるか」

という視点が強くなります。

同じ港湾物流でも、見ている対象が少し違うわけです。

船舶代理店の魅力は「港の最前線」にいること

船舶代理店の魅力は、物流をかなり近い距離で感じられることです。

物流業界では、PC上だけで貨物を動かす仕事も増えました。

しかし船舶代理店は違います。

自分が手配していた本船が実際に港へ入ってくる。

自分が調整した関係者が動く。

荷役が終わる。

そして船が港から出ていく。

仕事の結果が目の前で見えます。

これは港湾物流の仕事ならではの面白さです。

一方で、船を動かす以上、時間に追われる場面や予定変更、突発対応もあります。

だからこそ、

「安定したルーティンワークがしたい人」より、「多少バタバタしても現場を動かす仕事がしたい人」

のほうが向いているでしょう。

まとめ|船舶代理店に向いているのは「変化を楽しめる調整役」

船舶代理店に向いている人をまとめると、

  • 段取りを組むのが得意
  • 急な予定変更に対応できる
  • 電話やメールでの調整が苦にならない
  • 英語に抵抗がない
  • 責任感がある
  • 複数案件を整理できる
  • 船や港、国際物流が好き

こうした人です。

中でも個人的に一番重要だと思うのは、

「予定変更に動じないこと」

です。

船は、こちらの予定通りには動いてくれません。

天候も変わる。

前港の状況も変わる。

荷役時間も変わる。

船の到着時間も変わる。

そのたびに、

「また変更か……」

と思うのか、

「じゃあ組み直そう」

と思えるのか。

ここが船舶代理店との相性を大きく左右すると思います。

船舶代理店は決して楽な仕事ではありません。

それでも、自分が手配した巨大な本船が無事に着岸し、仕事を終えて港から出ていく。

その瞬間に感じられる達成感は、一般的なオフィスワークではなかなか味わえません。

数百人社員がいる私の職場でも、経験できる(配属になる)のはたったの数人です。

船が好き。ゴリゴリに話すが好き。物流が好き。そして、人と人の間に立って物事を動かすのが嫌いじゃない。

そんな人なら、船舶代理店はかなり面白い仕事になるはずです。